第22章 揉め事
「ねぇ伊地知〜僕ってさぁ、舐められてんのかな?」
「へ?えぇ?五条さんを舐めるような人がこの世に存在するんですか!?」
ミラー越しに僕をきょどりながら見てくる伊地知は、いつ自分に火の粉が飛んでくるかとビクビクしている。
はぁ、僕を何だと思ってんだよ…
まぁ確かに、たまーにちょーっと八つ当たりする時なんかもあるけどさ。
「だよねェ〜僕はいつだってあんな爺いどもすぐに殺せるって言うのにさ、本当に困ったもんだよ。気を使うのは」
そんな僕の言葉に「え?気を使う!?五条さんが??」なんて伊地知の独り言が聞こえてくる。
上の連中全員殺してやろうか。そんな考えまで浮かぶほどに、イラついて仕方がない。
でもそんな事をしたら、きっと悲しむのはリンだ。
人の良いアイツの事だ、きっと自分のせいだなんて言いかね無い。
まぁ揉み消す事なんか容易いが、そんな事をしたって何の意味もないだろう。あんなしょうもない人間は次から次へとうじのように湧いてくるだけだ。
「はぁぁーー、甘いもの食いてェー」
後ろへともたれながら、長い足を放り出すとポケットのスマホが震えたのに気が付いた。
まかさまた仕事じゃねェだろうな。と思いながらスマホを取り出すと、その画面に映るのはリンからのメッセージ。
その名前を見るだけで、イライラしていた気持ちが少し落ち着き平静を取り戻す。
【今日の任務終わり〜!!これから硝子とご飯行くことになった♪】と何やら楽しそうな文面が送られてくる。
それにフッと小さく笑みをこぼしながら【僕はまだまだ仕事だよー楽しんでおいで!僕も早くリンを食べたいな♡♡】と返信を返すと【悟のえっち!!ばか!!】と、きっとこのメッセージを見て大いに赤面しているであろうリンを想像してクスクスと声を出して笑った。
あー本当飽きないなぁ、こんなメッセージ一つですら癒される。
だからもちろん「スマホを見て五条さんが笑ってる!?!?」なんて内心ヒヤヒヤしている伊地知に気がつくはずもない。