第1章 一目惚れ
「えっと影千佳リンです!よろしくね」
絶対に七海君にも聞こえたであろう五条の言葉。だけど彼は特に気にした様子もなく「こちらこそ」と言ってもう一度丁寧に頭を下げた。
何か反応されるのはされるので困るけれど、ここまで無反応だとそれはそれで悲しい気もする…思わず見惚れてしまった自分が何だか恥ずかしくて仕方がない。
だけれど私は、そんな事を感じさせないようにニコリと微笑んだ。
3月になってすぐ、3ヶ月の長期任務に駆り出されていたため、一年生と会うのは今日が初めてだ。
七海君の隣には「灰原雄です!!」と元気よく弾けるような笑顔で挨拶をしてくれた、無邪気な男の子がもう一人。
「そういえばリン、向こうでの生活はどうだったんだい?」
傑が私達の横にやってきて、いつものように優しげに言葉を発する。
「それがさぁ、本当大変だったよ。ものすごい田舎だと思ったら、山10個分くらい呪いで溢れてるの。もう刀ふりすぎてさらに手の皮厚くなっちゃったよ…」
そう言って自分の掌を見て、剣だこの出来た手をさする。今さらだけど…女の子で剣だこって…これ以上はゴツい掌になんてなりたくない。そんな事を切実に思う。
「あ!でも悟が何度か来てくれたおかげで、かなり事が早く進んで1ヶ月は早く帰って来れたんじゃないかなぁ」
思い出したかのように隣にいた悟見上げると、彼はギョッとしたような反応をしてすぐさま「ッおい」と言って言葉を漏らす。