第1章 一目惚れ
「七海健人です。よろしくお願いします」
礼儀正しく下げられた頭。低く落ち着きのある声はどこか色気を含んでいて、その背の高い彼を見上げこう思った。
“あぁ、きっと私は彼に恋をする”
一目惚れとはこういう事なのかと、
今まで一度だって恋をしたことのない私にはとても信じられないような状況で、ただ私はひたすらに目の前の彼をボーっと見つめていた。
そんな私の視線を崩したのは、頭上から降ってきた軽薄な男の言葉と、肩にぽんっと乗せられた腕。
「なぁ〜にリン、もしかして一目惚れでもしちゃった?」
その言葉に、その軽々しさに、思わずボッと顔面を紅色に染めてすぐさまその声の主へと睨みを効かせる。
私の肩に置いた手ごと、クスクスと小さく笑いながら身体を小刻みに揺らしている彼、五条悟は。綺麗に透き通る白髪の髪がキラキラと反射して、高そうなサングラスから除く碧色の瞳で全てを見透かしているように私を見下ろす。
「ほーら、顔赤いぜ」
なんて言いながら私の頬をツンツンと弄ぶものだから、私はその手をバシっと払い除けて彼を無視するようにして目の前の七海君へと視線を戻した。