第21章 恋人とデート
「悟…今すぐ私の事抱いて」
「は!?」
持っていた鞄を床へ投げ捨てると、そのまま着ていたワンピースのボタンを一つづつ外していくリン。
「ちょっ… リン!落ち着いて!どうしたのいきなり!」
「いきなりじゃない!私だってずっと思ってたよ、私は悟にふさわしいのかって!それなのにあの子が悟と激しくて熱い夜を過ごしたとか、自分との方が身体の相性良いとか言うから!悟がモテるのなんて分かってるし…悟の過去に嫉妬したらダメだってずっと言い聞かせてたけど…あんな事直接聞いたら…私は…私はッそんな技術なんて…なんにもっ…ひっく…ないけど…っそれでも、悟の…ことがっ」
珍しく大きな声を出すリン。それは次第に涙へと変わりポタポタと再び瞳から大粒の涙を溢れ出させる。
「…うぅ…ひっく…私の方が、あの子よりも、悟の…ことっ…好きだもんっ…ひっく…悟との身体の、あいしょ…だって…これからいっぱい…勉強してッ…だから私のこと…ひっく、抱いてよぉ…っ…頑張る、からぁ…ッ」
僕はそんなリンを抱きしめると「リン…ごめん、ごめんね」と呟き震えるリンの背中を強く包み込んだ。
そんなふうに思わせてたなんて、僕は気がつきもしなかった。
僕がクズだったことは高専時代知っていたはずだし、あの時は何のリアクションもなかったから、当然今だって何も気にしていないんだとばかり思ってた。
でも良く考えたら分かる事だ。
だってリンは昔から、自分の心を隠そうとする癖があったはずなのに。
それを知っていたし、そんなリンを僕はずっと見てきていたはずなのに…いざリンを守る立場になったらそれを僕が見逃していたなんで、なんて馬鹿だったんだろう。
そして、今更ながら過去の自分の行いに死にほど後悔している。
僕がやってきたクソみたいな行いのせいで、好きな女をこんなにも傷付けるなんて。
僕って本当…どうしようもない馬鹿だ。