第21章 恋人とデート
「へぇー、綺麗なもんだねぇ」
巨大水槽の前で魚たちを見上げながら悟が呟く。
こうして見ると、悟って本当絵になるなぁ。サングラスの隙間から覗く碧色の瞳が、水槽の水と反射してキラキラして見える。
「うん、綺麗だね…」
そんな悟をボーッと見つめながら、ついそう呟くと。そのままスマホを構えてパシャっと写真を撮った。
「今僕のこと撮ったのー?どうせなら二人で撮ろうよ」
悟は自分のスマホをポケットから取り出すと、私の肩を抱き寄せて巨大水槽を背景にスマホを構える。
「ほらリン、もっと僕にくっついて」
「うん」
画面に写し出される私達の写真。二人で写真を撮るなんて初めてかもしれない。
そして思い出すのは、悟の部屋にあった私達四人の写真のこと。
悟、私、硝子、傑の笑顔の写真。
デート中にこんな話しをするべきじゃない事くらいわかる。だけどこうして悟といれば、自然と思い出してしまう高専時代のことや、傑のこと。
それをいつまでも避け続けて、考えないようにすることが正しいのか分からない。
だってこうやって二人一緒にいるだけで、ふと思い出してしまうほど私にとって四人での思い出は大切な宝物で、きっと悟にとってもそうであるはずだから。