第3章 初めての
「…っ煽ってんのか…そんな声で名前呼ぶな…止まんなくなる」
一瞬離した唇から、悟が息をするようにそんな事を言ってくる。
「…っん…はあッ…」
熱いものが絡まり合うようにして私の唇と悟の唇から銀の糸がタラリとたれていく。
「…さとっ…くる、し…よぉ…」
どうやって呼吸をしたらいいのか分からない。頭も手も足も…もう全ての感覚が鈍ってしまったようだ。
私のその言葉を聞いてか、身体が倒れないように支えていた悟の腕が緩んだかと思うと、ゆっくりと顔が離れた。
「……息しろよ」
目の前には色っぽく、少しだけ火照った顔をしている悟が目を細め優しげに私を見下ろす。
そんな私は「はぁはぁっ」と肩で息をしながら悟を睨み付けるようにして見上げた。
「息しろじゃないよ!いきなりなんでっ、キ…キスなんてしたの!」
顔をカーッと赤く染める私に、悟は身体を離すと。さっきまでの色っぽい表情をパッと変えてニヤリと笑った。
「密室に二人きりで壁ドンとか少女漫画みたいじゃね?あそこでキスしとかなきゃ失礼かと思ってさ」
「はあ?何言ってるの!この世界少女漫画じゃないから!しかも失礼って何、私に対しての方が失礼だから!」
一生懸命睨み付ける私に対して、悟は特に焦るそぶりすら見せずにやっぱり笑っている。
「それに、リンだってとろ〜んとした目して気持ち良さそうにしてたけど?」
「なっ!!」
悟って本当デリカシーない!!とろ〜んとしてたんじゃなくて、訳がわからなくてボーッとしちゃってたの!!