第3章 初めての
「…あれ?」
だけれど私に呪具が降りかかってくる事はなく、ガラガラと落ちていく音と、悟の「痛てェ」と言う声だけが頭上から聞こえてくる。
つぶっていた目をゆっくりと開くと、足元に散らばる呪具。それとそれに押し潰されている悟のサングラス。
「リンちゃーん、だから気を付けろって言ったろ」
声のする方へ目線を向ければ、悟が棚に両腕をついて私へ覆いかぶさっていた。
どうやら悟が私を庇ってくれたらしい。その拍子にサングラスも落ちてしまったみたいだ。
「ごめんね…っ」
見上げた先の悟の瞳は、窓から差し込む太陽の光に反射してとても綺麗な碧色に輝いている。思わずそのままジッと見入ってしまった。
「悟の瞳…綺麗」
その私の言葉を聞いた瞬間、悟の綺麗な六眼が一瞬だけ大きく見開かれ、またすぐいつもの表情に戻っていく。
「きっとこんな綺麗な色のピアスとかあったら私買っちゃうな〜」
ニッコリと笑い、乱れてしまった悟の目にかかる白髪の前髪をスッと横に流した時だった…。
「…っ…んッ…ふっ」
唇に触れた温かい何か。あまりの驚きに目を見開き、それが悟の唇だと気が付いた時には、悟は私の顎をクイっと持ち上げていた。
悟の舌がぴちゃりっと音を立てて私の唇を割って入ってくる。次第に悟の熱い舌が私の舌を口内で絡め取った。
「……ふぇッ…んっ…んンッ…」
どんどん熱くなっていく二人の吐息。何が起きているのか頭の中は真っ白で、次第に足の力が抜けていき悟へとしがみ付いた。
そんな私に気が付いた悟の腕が私の腰へと回る。
「…ふあっ…さと…るッ」
息が苦しぃ。あまりに強く当てられた熱に頭がぼーっとして可笑しくなりそうだ。