第20章 心配症
「だめ!離れて!恥ずかしいし!」
「もーリンってば照れ屋だね〜、まぁそんなところも可愛いんだけど♪」
「ちょっと人前で辞めて!本当に!硝子は呆れてるし、伊地知君はビックリして気絶しそうだよ!!」
やっと離れた悟の背中をグイグイと押してドアの前まで連れていくと「伊地知君ごめんね!もう悟連れて行って大丈夫だから」と手を振った。
「あ…は、はい!ところでお二人は…」そう伊地知君が言いかけているところで、悟が構わず言葉を重ねてくる。
「ちょっとリン!僕明日から出張なんだよ?もっと別れを惜しんでよ」
目隠し越しでも分かる。シュンとした表情で私を見下ろしてくる悟。そうだ、明日から一週間悟に会えないんだ。
「あ、そっか出張だったよね。頑張ってね!怪我しないように気を付けて!いってらっしゃい」
やっぱり悟に一週間も会えないのは寂しいな…と思いながら、悟の手をぎゅっと握ってにっこりと微笑めば「あーいってらっしゃいとか心に染みる…」とぼそりと呟いた悟が私の手を握り返す。
そんな私達のやり取りを見ていた硝子が椅子から立ち上がると。
「いいから早く行け、こういう時こそ瞬間移動でも使ったらどうだ」と言ってバンっと扉を閉めた。
ドアの向こう側では「ちょっと硝子!酷い!」という悟の声が聞こえてきたけど。しばらくして静かになったところを見ると、伊地知君が連れて行ってくれたんだろう。