第19章 長年の気持ち
ガチャっという玄関が開く音がして、悟が帰って来た事が分かる。
いつの間にかソファーの上でうとうとしていた私は、パッと起き上がった。
「悟!おかえり」
ぱたぱたと小走りをし、廊下へと顔を覗かせれば靴を脱いでいた悟がこちらへと振り返った。
「何これ…やばい」
「ん?」
「幸せすぎるでしょ…」
「あははっ、いきなりだね」
私の元へと歩いて来た悟は、私を見下ろし口に手を当てる。
「いやだって。あー疲れて死にそーって帰ってきたら好きな子が笑顔でおかえりって言ってくれるんだよ?幸せすぎない!?」
信じられないものでも見たのかと言うほど、まじまじと私を見下ろし真剣にそんな事を言ってくる悟に思わず「ふふっ」と笑ってしまう。
「いや本当マジで、今の一瞬で僕の疲れ全部吹っ飛んだわ」
「こんなことで悟の疲れがとれるなら、いつだってするよ」
「こんなことじゃないよ、僕からしたら長年夢に見た光景だから!本当今なら幸せで死ねるレベル」
「これで呪術師最強の五条悟が死んだら、きっと皆んなもビックリだろうね」
「僕からしたら、呪にやられるよりよっぽど現実的だと思う」
悟のそんな言葉がおかしくて、クスクスと笑っていると。悟がそんな私をぎゅっと抱きしめる。
「遅くなってごめんね、待っててくれてありがと」
「ううん、こんな時間までお仕事お疲れ様」
「あー、やっぱり最高に幸せ」
私の首元へと顔を埋める悟に、私も腕を回し悟の胸元へ顔をくっ付けた時だった。
「ちょっと待った!ストップ!僕汗臭いかも!」
「え?全然臭くなんてないよ?」
むしろ良い匂いするけど…悟はいつも良い匂いするのに。
「いや!でもリンに臭いとか思われたら、それこそ僕本当に死んじゃうから!シャワー浴びてくる、秒で浴びてくる」