第19章 長年の気持ち
目隠しを巻き直しながら廊下を歩いていく悟の背中を見送る。
伊地知君大丈夫かな。怒られなきゃ良いけど…悟に怒らないよう言っとけば良かった。
私は悟から受け取った鍵を見つめると、それをぎゅっと握りしめ。私も夕暮れの廊下を歩き始めた。
報告書の提出を終え、とりあえず自分の家へと帰ってシャワーを浴びる。部屋着に着替えた後、スマホを手にして悟の部屋へと向かった。
ガチャっと鍵を開け「おじゃまします」と言ってから中へと入る。
もちろんそこに悟は帰って来ていなくて、主人の居ない部屋に入るのは変な気分だ。
リビングへ進んだ私は、とりあえずソファーへと座った。
うん、何してよう…
人の家で一人待っているのって初めてだ。全く何をしたら良いのか分からない。
しかも自分の部屋と同じ作りだから…余計に不思議な気分だ。
しばらくテレビを見たり、スマホをいじっていたものの、悟はまだ帰ってくる気配はなくて。
とりあえずリビングをうろちょろし始めると、窓辺に置かれた一枚の写真に気が付く。
以前来た時には気がつかなったけど、それは大きな窓には不自然なほど、ちょこんと小さく置かれた一枚のフォトフレーム。
「あ…これ」
そこにあったのは、私 悟 硝子 傑が4人で肩を組み笑っている写真だ。
教室で撮った写真だろうか、4人とも何がそんなに楽しいんだと思うほど、ニコニコと満面の笑みをしている。
懐かしいな…
毎日4人でいたっけ。
今は、3人になってしまったけど…
傑がいなくなって、私達は自然に傑の話をしなくなった。当然だ…どんな顔をして傑の話をしたら良いか分からなかったからだ。