第19章 長年の気持ち
「僕、初めて最強の自分を嫌だと思ったよ」
「あははっ、何言ってるの」
「こんな時くらい仕事したくない、幸せに浸りたい」
「でも、悟を必要としてる人はたくさんいるんだよ」
「でも今のは絶対僕じゃなくても良い案件だった」
駄々をこね、任務を嫌がる悟の頭を私はよしよしと撫でる。
そうだよね…悟はいつも、すごく頑張ってるよね。
いつも誰よりも任務をこなして、実は誰よりも働いている。
いつもいつも朝早くから、夜遅くまで忙しくしているのを…知ってるよ。
まぁ性格的に適当に見えるから、周りからはそう見えなくて損をしてる部分もたくさんあるだろうけど。
「行きたくない」
「うん、そうだね。でも行かないと」
「リンは僕を行かせたくないとか思わないの?」
「もちろん思うよ、私だって一緒にいたい。だってせっかく想いが通じ合った日なんだから」
そう言い悟の背中に回していた腕にぎゅっと力を込めれば、悟も私の身体をぎゅっと包み込む。
「私、今日悟の部屋で待ってて良いかな?悟が帰って来るまでずっと待ってるから。だから…頑張って来て?」
首を傾げながら悟を見上げると、悟は「あぁー、もうマジで無理。離れたくないッ」と声を上げたあと。
「でも行って来るよ…リンのお願いだからね」
と言って私の額にキスを落とし、抱きしめていた身体をゆっくりと離した。