第19章 長年の気持ち
早足で高専内の廊下を歩いていると、目の前から悟が歩いて来るのが見える。
悟っ、いた!
そう思いスマホをポケットへしまい慌てて走り出そうとしたところで、私はピタリと動きを止めた。
溢れ出る呪力
禍々しいほどのオーラ
悟が呪力を垂れ流しにするなんて有り得ない…
そう思い悟を真っ直ぐ見つめると、悟はゆっくりと歩いて来た後、私の目の前でその足を止めた。
「久しぶりだね、リン」
その声は、いつもの悟の軽い話し方なはずなのに…どこか少し怖く感じる…
「……悟、何かあったの…?」
悟の表情を伺うようにしてそう聞けば、彼は「はッ」と笑ったあと、小さく口角を上げ私の腕を強く引いた。
その瞬間、バンっと乱暴に壁へ押しつけられる私の身体。
両腕は強く握られ、私を見下ろしてくる悟のその表情は目隠しをしていて良く見えない。
それなのに、恐ろしいほどのオーラを放つ悟は、その呪力を抑えるつもりもないのか…そのまま私を押さえ付けた。
「…ッ悟…痛いよ!」
腕を引き抜こうと動かすがビクともしない。
「さっき、七海と何話してた」
その声は聞いたこともないほど低く、私の耳へと届く。
悟…私と七海君が話してたの…見てたんだ。
だけどまさか、悟の事を話していたなんて言えるはずもなく、押し黙る私に悟はもう一度同じ質問をした。
「七海と何話してたかって聞いてるんだけど」
「別に…たいした話じゃないよ…」
「まさか、より戻すとか。そんな話しじゃねーよな?」