第19章 長年の気持ち
「硝子〜この間の件なんだけどさー」
ガラッと硝子のいる部屋のドアを勢い良く開け中へ入ると、窓辺に佇み何かを見下ろしている硝子の姿。
「そんなとこで何見てんの?珍しいね」
そんな僕に気が付いた硝子は「チッ」と舌打ちを鳴らし「最悪のタイミングだ」と呟く。
「何なに〜?どうしたの〜?」
そんな硝子の後ろから、ひょいっと窓を覗き込み、僕はピタリと動きを止めた。
あはははっ、なるほどそういうことか。
これは確かに最悪のタイミングだ。
硝子と僕が見つめる先には、笑顔で話しているリンと七海の姿。
僕のことはずっと避けているのに…久しぶりに会った七海にはそんなに楽しそうな笑顔を向けるんだね。
思わず拳を握り締める。
そんな僕を見てか、硝子が隣で呆れたように溜息を吐き出す。
「落ち着け五条、別にただ話してるだけじゃないか」
まさかここに来て七海と会ってしまうとは。
しかもよりによって僕と気まずくなっているときに。
何が今まで我慢出来てたんだから、もう少し待つよ…だ。
全然我慢なんて出来ないじゃないか。
全然待てやしないじゃないか。
僕は「ははっ」と声を出し、笑い合うリンと七海をもう一度見下ろすと。
「そうだ、ただ話してるだけだ…でもね、もう限界なんだよ。いつまでも綺麗な部分だけを見せるなんて出来ない。だって僕は…もう何年も前からずっとリンのことだけをドロドロのぐちゃぐちゃに愛してしまっているからね」
ニヤリと口角を上げ、ポケットへ手を入れた僕は「はぁー、私は知らないからな」という硝子の言葉を無視し部屋を後にした。