第17章 二人でデート
私はその瞬間、強く握られていた悟の手をバッと離すと、必死に右腕で顔を覆い一歩後ろへと下がった。
「あ…の…私」
焦ったように口から出てくる言葉はそんな情けない声。
私はもう一度、驚いたように私を見下ろしている悟を見つめると、後ろを振り向き走り出した。
だけど、そんなことしてももちろん意味はなくて。私よりもはるかに長い悟の手足から逃げられるわけもなくて。
「リン、逃げないで」
再びパシッと掴まれた私の手。後ろからは悟のそんな低い声が聞こえてくる。
だけどこうなる事は予想できた。そして長年染み付いた体術のおかげか、私はもう一度悟の手を素早く振り払うと悟の腹部目掛けて脚を振り下ろした。
「ちょっ、落ち着けって!」
それを悟は軽々と足を掴んで止める。そんなの当たり前だ、私が悟に蹴りを入れられるわけない。むしろ無限で弾かれなかっただけマシだ。だけど私の作戦はここからで…私はそのまま掴まれた脚を捻るようにして回し蹴りをする要領で掴まれていた脚を弾くと、悟が私の脚を離した瞬間再び走り出した。
周りの人は悟に蹴りをくらわす私に何事かと思っているに違いない。
普通女の子がこんな事しないもんね。
でも元々私の蹴りを受け止めると分かっていた私は、初めから悟が私の足を掴んだ瞬間捻り技で脚を外し逃げるつもりで悟目掛けて脚を振り下ろしていた。
頭のキレる悟のことだ。本当はもしかしたら、悟もそんな私の行動に途中から気がついていたかもしれない。