第17章 二人でデート
「綺麗だねー」
私と悟がやってきた高層ビルの屋上は、お洒落な小さなバーやソファーなんかが置いてあるまさにデートスポットって感じの場所だ。
それでも平日ど真ん中だからか、それとも大人しかいないような時間帯だからか、そこは静かで人も少なく何だか落ち着く。
私は目の前に広がる夜景を見ながら、未だに繋がれた悟との手にドキドキしている自分に気が付いた。
「…悟、手そろそろ離さない?」
「どうして?」
「いくらデートの練習って言っても、やっぱりこういうのはあんまり良くないんじゃないかなって…」
夜景を見たまま呟く私に、悟はさらに手の力を強めた。
「リンさ、何かさっきから少し変じゃない?」
その悟の言葉に、自分自身が思っていた事を言われ、思わず黙ってしまう。
「僕何かした?」
少し落ち込んだような声が私の上から降ってきて、私は慌てて顔を上げる。
「違うよ!悟は何にもしてない!私が…私が勝手に変な気持ちになっただけで…」
「…変な気持ち?」
どうしよう、悟に誤解させてしまった。悟は何も悪くないのに…
私がただ…いつもと違う自分に混乱しているだけなのに…
「私、今日すごく楽しかった。悟にドキドキもした…」
「え…本当に?」
私の言葉に悟は驚いたような声を出す。
「うん、でもドキドキするたび、悟がデートに慣れてるんだなって思ったらすごく変な気持ちになって…それにさっき悟の好きな人の話し聞いたらもっと変な気分になって…何かモヤモヤして…」
うつむき話す私の手を、悟がぎゅっと強く握りしめる。
「私今日何か変なの…悟のことばっかり考えてるみたい…」
悟が好きな人を思って見せた表情が忘れられない。
そう思えば思うほど、胸が苦しい。
「これって悟が最初に言っていたことが成功したってことなのかな…悟にときめいてドキドキして。だったらきっと…」
悟は好きな人とのデート成功するよ。そう言おうと思ったところで、うつむいていた私の手を引っ張り悟が上へと向かせた。