第17章 二人でデート
お互いに驚いた表情をし、見つめ合っていたところで。悟が「ぶはっ」と堪え切れないようにして笑い始める。
「ちょッさすがの僕もここまでの流れは想像してなかった!」
「あはははっ」と大きな声で笑う悟に、私は余計訳がわからず黙り込む。
もしかして、こんなストレートに言っちゃいけない事だった?
そう言えば今まで悟の好きな人の話って一度も聞いた事がない。
女の子と遊んでる話とかは学生の時聞こえてきて知ってたけど。
悟の彼女とか好きな人の話は一度も聞いたことないな…
一人考え込む私を、悟はやっと笑いを止めて見下ろすと。
「まぁとりあえずは、そう言うことで良いや」
「とりあえずとは…?」
「少しずつ分からせてあげるから」
「だからどういうこと?」
「さっきリンが言ったみたいに、練習させてよ。デートの練習」
「何だぁ、やっぱりそうなんじゃん」
「そうそう、僕好きな子がいるんだよね。すっごく大好きな子が、それなのに全く僕の気持ちに気が付いてくれないの。だからさ…今日はリンがどうしたら僕にドキドキするのか、何をされたらときめくのか、どんな時に頬を染めるのか…全部教えてね」
足を止めた悟は、私の髪をそっと耳へとかけると…ありったけの甘い声でそう囁いた。何だか悟に囁かれた耳元が熱を持つ。
悟の好きな人
悟がすごく大好きな人
それを聞いた瞬間、何だか変な気持ちになる。
何だろう。悟とこんな話をするのが初めてだからだろうか。
悟にこんなに想われている人を想像しながら、私はこの胸のモヤモヤをかき消すようにしてぎゅっと手のひらをにぎりしめると。
「分かった!任せて」と言って悟へニコッと微笑んだ。