第16章 酷い夜だからこそ
「…リン」
そんな声が聞こえてきて、ゆっくりと目を開く。
「ん…」
「僕そろそろ任務行くけど、6時前だしリンはまだ寝てて良いからね」
上下黒の服を身にまとい、白い包帯で目隠しをした悟が私を覗き込んでいる。
どうやら私はいつの間にか眠っていたらしい。あんなに眠れないと思っていたのに。私の身体にはふわふわの毛布がかけられていて、かすかに悟の香りがする。何だか…落ち着く…
悟はうっすらと目を開けている私の頭をそっと撫でたあと「じゃあ行ってくるね」と言うと背を向けリビングを出て行った。
遠くの方では玄関が閉まる音が聞こえる。
私はいつの間にかもう一度瞼を閉じると、深い深い眠りへと落ちていった。
次に目を覚ました時には時刻は7時半で、ゆっくりと身体を起こすともちろんその部屋に悟はいない。そっか、何かうつらうつらとしてたけど、悟が出て行ったのは夢じゃなかったんだ。
周りを見渡せば、昨日食べかけにしていたお菓子やジュースは綺麗に片付けてあり、私はかけてあった毛布を綺麗に畳むと、自分の部屋へと戻った。
後で悟にありがとうメールしておかないと。
夜ふかしどころか、朝方まで起きていたはずなのに、やけに頭がスッキリとしている。
どうやらこの数時間本気で爆睡していたみたいだ。
悟は大丈夫かな。ショートスリーパーって言ってたけど、少しは寝たのかな。
部屋にいても特にやる事が思いつかず、任務服へ着替えると、玄関に置いてある刀を背負いそのまま部屋を出る。
「とりあえず高専行こう…」