第16章 酷い夜だからこそ
「リンはさ、僕や他の術師と違って優しいんだよ。だから力の抜き方を知らない、適当にできない。でもさ、そんなんじゃいつか自分が潰れるよ」
「………」
悟の言う事はもっともだ。きっと私はこのままじゃ…自分をダメにしてしまう。呪いを祓うどころか…呪いにあてられてしまう。
「性格を変えろとは言わないよ、リンはその優しさあってこその君だと思う。けどさ…もっと頼ってよ。もっと甘えてよ。僕でも硝子でも良いから、もっと自分の逃げ道を作れよ」
悟はサングラス越しに真剣な眼差しを向けると、私を見つめた。
「一人で考え込みすぎるな、辛い時は辛いって言っていいんだ。寂しい時は寂しいって言っていいんだ。お前が元気になるなら、僕はいつだって飛んでいくよ、どこにいても何をしててもリンのところへ行くよ。だから頼む…もっと僕を頼って」
悟のその言葉を聞いた瞬間、そうか…今日悟は私の気持ちを分かっていて自分の家へ誘ってくれたのか。鍋をしようって、映画を見ようって言ってくれたのか。
まるで解けない鎖に埋もれてしまいそうな私を…悟はいつだってこうして軽くしてくれるんだね…
やっぱり悟はすごいや。
そして、とてもとても…
優しいね。