第16章 酷い夜だからこそ
絶対に一回も使った事がないであろう、高級キッチンメーカーの真新しいお鍋へと切った食材を入れていく。
味を付けて煮込んだらあっという間に完成で、それをテーブルへと持っていった。
「うわぁ、蟹のいい香り」
お鍋の蓋を開けると、とても良い香りが漂ってきて。先ほどまで食欲がなかったはずなのにお腹が空いてくる。
「はい悟、どうぞ」
「ありがとー、それじゃあいただきまぁす」
ぱちんっと手を合わせた悟がお箸を口へと運ぶ。
「うん!美味しい!リンって料理上手だったんだねー!」
ぱくぱくと食べてくれる悟の言葉に嬉しくなりながら、自分もよそって食べ始める。
「うわぁ!蟹美味しい!これ私の味付けが良いんじゃなくて、蟹自体がめちゃくちゃ美味しいんじゃない?」
絶対高級蟹だ!
「いやいや、リンの味付けが完璧なんでしょー」
「何か悟に褒められると変な感じ〜基本人にはダメ出し多いのに」
「僕だって褒める事くらいあるよ、特にリンには甘い方だと思うよ〜」
「えーそおー?学生の時なんていつも弱いとか遅いとか言われてた気がするんだけど!」
「あー、あの時の僕はなんせイキってたからね」
「確かに!」
悟と二人でくだらない話をしていると、時間はあっという間に過ぎていきすぐにお鍋は空っぽになった。