第16章 酷い夜だからこそ
良かった。ベースとなるお鍋の材料はきちんとある。でもその他にもピーマンやナスなんかも入っていて…うん、確かに…手当たり次第って感じがする。
私はそこから使う食材だけを取り出すと、他は冷蔵庫へとしまった。
「僕も何か手伝おっかー?」
「うーん、じゃあ野菜洗ってくれる?」
「了解〜」
腕を捲った悟が私から野菜を受け取ると、バシャバシャと洗っていく。
背が大きいからか、悟が来ただけで一気にこの広いキッチンが狭く感じる。
悟の部屋は、私の部屋と間取りは同じだ。
ホワイトで統一された私の方の部屋とは違い、こちらの部屋はグレーの落ち着いた雰囲気で統一されており、外の夜景をとても映えさせている。
そして何よりもすごいのは、映画館なの?というほど大きなテレビと立派なスピーカー。私の部屋にあるテレビもすごい大きかったけど、これはもう普通のレベルを超えてる。
やっぱり特級術師はとんでもない給料に違いない。
それにしても…悟とこうして二人で並びながら料理してるなんて何だか変な感じだ。
何だかまるで…
「新婚さんみたいじゃない?僕たち」
今まさに考えていた事を口にされ、思わず目を見開き隣の悟を見上げる。
「あ、もしかしてリンもそう思ってた?」
ニヤニヤと笑いながら白菜を手渡してくる悟は、信じられないほど野菜が似合わない。
「なっ!思ってないよッ」
まるで恥ずかしい考えを読まれたみたいに慌てる私に「嘘だ〜絶対思ってたでしょ」なんて言ってくる悟から視線を逸らした。