第15章 母校と同期
「ねぇねぇ…さと…る」
「んー?どうした?」
目を瞑っていたリンはそっと瞼を開くと、床に座りソファーへ寝転ぶリンを見下ろしていた僕を見つめる。
「さと…る…さ、どうして来て…くれなかった…の?」
「…来てくれなかった?」
何の話をしているのか分からず聞き返す僕に、眉間の皺をよせるリン。
「ずっと…来てくれるの…まって、たんだよぉ…なのに…8年も…私のことほっといて…さぁ…」
ポツリポツリと話すリンの言葉に、やっとその意味が分かった。
なるほど、海外に居た時の事を言っていたのか。でもそれは…僕のセリフなんだけどな。
ねぇ、何でリンは僕に会いに来てくれなかったの。リンにとって僕って…その程度の存在だったの?
僕だって何度も会いに行こうと思ったよ。何度会いたいと願ったか分からないほど…毎日君を想ってたよ。
だけどね…僕は、待つと決めていたから。リンが自分で帰って来るのを待つと決めていたから…だから僕はずっと待っていたんだ。
そう言ってしまいそうになる気持ちを抑えてゆっくりと口を開いた。
「悪いね、忙しかったんだよ。僕には夢があるからね、それに向けて忙しかったんだ」
「…ゆ…め?」
「そう、とても大切な夢だ」
「そっかぁ…じゃ、しかた…ないね」
再び眠気に襲われているのか、とろーんとした瞼がゆっくりと落ちていく。そしてポツリと呟くリンのその声は、小さく掠れて僕へと届いた。
「でも、さ…本当に、さみし…かったんだょぉ…本当は…ぁいにき、て…ほしかった…」
目を見開く僕とは裏腹に。そう最後に言ったあと…リンの瞼はゆっくりと閉じていき、そしてしばらくするとスースーと規則正しい寝息が聞こえてきた。