第11章 初夏の乾き
どれくらい泣いていたのか分からない。
灰原君が亡くなったのに、私は自分の為に泣いている。
何て自分勝手なのだろうか…
泣き腫らした顔のまま、寮へと向かう途中。
七海君と灰原君の任務を終えて戻って来たのか、ポケットへと手を入れながら目の前から歩いてくる悟が私に気が付いて目の前で足を止める。
「お前…どうした…」
その私の尋常じゃない様子に、目の前の悟が目を見開く。
「大丈夫、何でもないよ…」
そう言って通り過ぎようとする私に、悟は腕を掴み行かせようとしてくれない。
「悟、離して…今は一人になりたい…」
そんな悟を酷い顔のまま見上げれば、悟は眉間にシワを寄せさらに強く腕を握った。
「七海と何かあったのか」
「………」
「アイツ今、灰原の事で気が落ちてんだよ。喧嘩なら許してやれ」
「……違う…」
「違う?」
「…喧嘩じゃない…喧嘩なら良かったのに…」
「………」
「…別れた…七海君にフラれたの…私…」