第11章 初夏の乾き
「好き…七海君が…すき…だから…別れるなんて言わないでぇ…」
七海君と繋いでいた左手をぎゅっと強く握り、溢れ出る涙を反対の手で押さえた。
目元が痛い。喉が熱くてどうにかなってしまいそうだ。
だけど七海君は何かを言おうと口を開こうとしたあと、それを一度止め顔を歪ませると。
「……ごめん…」
そう短く言い放ち、私が握る手を離した。
そして…七海君はそっと立ち上がり、そのまま廊下を歩き出す。
私はそのまましゃがみ込むようにして、膝から床へ崩れ落ち、唇を噛み締める。
廊下には、私の泣き声と七海君の足音が響き渡った。
だから私は知らない。
「あの人なら絶対に守ってくれるから。絶対にあなたを死なせたりしないから…五条さん、リンさんを頼みます…」
そう呟いた彼の言葉を。