第11章 初夏の乾き
その日は突然に訪れた。
一年生の灰原君が任務中に亡くなったのだ……
予定では、二級呪霊の討伐任務だったはずなのに…そこにいたのは一級案件の土地神だったと聞いた。
灰原君の顔を見に行った後、廊下のベンチで座り込む七海君の前で立ち止まる。
何と声をかけたら良いのか分からなかった。
自分自身、こんな身近な呪術師が亡くなったのは初めてだったからだ。
声をかけて良いのかも分からなかった…
だけどそんな私に、先に口を開いたのは七海君の方だった。
「僕は無力だった、仲間一人守れないほどに…」
小さな声は震え、その顔は今にも壊れてしまいそうな表情で…私の胸をぎゅっと押しつぶす。
…七海君達の任務は、悟が引き継いだそうだ。
「分からなくなった。仲間一人守れない俺が…大切なあなたを守れるのか」
その七海君の言葉に、鼻の奥がツンとして…目元が熱くなる。
「呪術師は、死ぬ時は皆んな一人だ」いつか悟が吐き捨てるように言っていた言葉を思い出す。
「あなたを絶対に守ってくれる人が一人だけいる。僕はそれに気づきながらも…ずっとあなたを手放せないでいた。あの人の思いに気が付いていたのに…」
「七海君…何…言ってる…の?」
私を守ってくれる人?
そんな人七海君以外に必要ない。
以前話していた…七海君は私を、私は七海君を守れるように強くなりたいと言っていたあの時の事を思い出す。
「…僕じゃあなたを守れない」
小さく小さく吐き出される声は、私を現実から離していくみたいに…目の前を暗くしていく。
「私、守ってもらわなくても平気だよ。自分で自分を守れるくらい強くなるよ…だから」
そう言いかけた所で、七海君が私の左手をぎゅっと握った。