第10章 雪の夜
仕方なしに御三家の集まりに出て、実家でのくだらない集まりに顔を出して。なかなか終わらない事にイラつきながらも途中で実家を抜け出し急いで高専へと飛んだ。
リンの部屋に行けば、そこにリンの姿はなくて。携帯に電話しても繋がりもしない。
まさか俺の勘違いだったのか…と思いながらも、俺がリンの呪力を間違えるはずもなく、高専内を探せば。
雪の中空を見上げ立っていた。
その姿は儚く…静かで…今にも消えてしまいそうで…
思わず走り出し抱きしめたくなる気持ちを必死に押し殺してリンへと近づいたんだ。
リンの目元へと触れていた指を滑らし、そっと頬へと触れた瞬間。リンの肩がピクリと揺れる。
ヤバイ、起こしたか。
慌ててパッと手を離そうとした時だった…
「…さと…る」
呟かれた俺の名前。やっぱり起こしてしまったのかとリンを見るが、その瞳は閉じられ、規則正しい寝息もそのままだ。
もしかして、俺の夢…見てるのか…?
大きく目を見開き、ドッドッドッとうるさくなり始めた心臓を抑えるようにして胸元を握りしめる。
「もう本当…これ以上好きにさせんなよ…」
口からこぼれるようにして溢れ出た言葉は、紛れもない俺の本心だ。
俺はリンの眠るベッドへとギジリと音を立て登ると、そのままリンの隣へとゆっくり寝転んだ。