第10章 雪の夜
だけどそれよりも直ぐに思いついたのは。
どうしよう、実家に行っていない事がバレた…だった。
だけどさっきの悟は確かに「いると思った」って言った…
それってつまり…
私が口を開こうとした時だった。
「寒くて死ぬ。行くぞ」
私の腕をがっしりと握った悟の手は、とても冷たくて…赤くなっていた鼻の先を思い出す。
「もしかして悟…ずっと私の事探してくれてたの…?」
「あ?だったら何だよ」
「…でも悟、今日実家にいたんじゃ」
手を引かれるがままザクザクと雪の中を歩く二人分の足音だけが、あたり一面に響き渡る。
「抜けて来た」
「抜けて来た?それって平気なの?」
質問攻めをしまくる私に、悟は「チッ」と大きな舌打ちを落とすと。
「良いから一旦黙れ、もう面倒くせェから飛ぶ」
「へ?」
悟はクルリと私の方へ向くと、そのまま私を抱き上げ「喋るなよ、舌噛むから」と言った瞬間、周りの景色がフッと一瞬にして変わった。