第10章 雪の夜
ザクザクと、まだ誰も歩いていない新雪を踏みしめながら冷たくなってきた手に「はぁー」と息を吐きかける。
「もう今年も終わりかぁ」
さっき部屋を出る時時計をみたら時刻は0時少し手前だった。
今年一年がもう終わる。
今年も色々な事があったな。
楽しい事も幸せな事もいっぱいあった。
それと反対に辛い事も苦しい事もたくさんあったな…
でも、皆んながいてくれたから。高専の皆んながいてくれたから…私はこうして今日を生きている。
けど…だけど…
「やっぱり一人の年越しは寂しいや…」
空を見上げ白い息を吐き出した時だった…
「やっと見つけた」
私以外誰もいるはずのない空間に、低く機嫌の悪そうな声が響く。
「つーかこんな寒い中、外で何してんだよ」
しかもそれは、今ここにいるはずの無い人物の声で…
私はゆっくりと後ろを振り返ると、小さく呟いた。
「……悟…どうして…」
振り返った先にいたのは、着物姿の悟だった。
悟は機嫌が悪そうにザクザクと雪の中を歩いてくると、私の前で立ち止まる。その表情は眉間にシワがより鼻の頭は寒さで赤くなっているのが分かった。
「いると思った」
「……え?」
「なのに部屋にはいねェし、無駄にいろんな場所探しただろうが」
「え?何…?理解が追いついていないのですが…」
何で悟がここに?というか実家は?そして何で着物?色々な事が頭の中を巡っていく。