第9章 少しの変化
その七海君の言葉に胸が痛くなる。
もしも私が七海君の立場だったら…そう思うと、胸が張り裂けそうなほど痛くなったからだ。
きっと七海君に何かあったら…私は冷静じゃいられない。
だけどもしかしたら、明日七海君に何か起きるかもしれない。それは一ヶ月後かも、一年後かも…それとも数年後かもしれない。
そう思うと、やはり私達の生きる世界の残酷さに…涙が出そうになった。
私達は、ただただ互いの熱を確認するようにして強く抱きしめ合うと、その温もりを逃がさないようにと…ひたすら強く願った…。
「…あなたを守れるくらい強くなりたい」
「私も…七海君を守れるくらい強くなりたいよ…早く一級にならないと」
「………」
「どうしたの?」
「一級になったら、途端に任務のレベルが上がる。本当はこれ以上危ない任務に行って欲しくない…」
身体を少しだけ離し、心配そうに私を見下ろしてくる七海君。
七海君の気持ちは痛いほどよく分かる。だって私も同じ気持ちだから…七海君の階級が上がって、危ない任務に行く事になるのが怖い。
だけど…私達は…それでも呪術師なんだ。
人を助け、呪いを祓い続けないといけない。
怖くないと言ったら嘘になる。
自分だって死ぬのは怖いし、
大切な人が死ぬのはもっと怖い。
だから、ただひたすらに…
「私は死なないよ。だから大丈夫」
私達は。
……そう自分に言い聞かせる事しか出来ないんだ。