第9章 少しの変化
「まぁな」
「うわぁ、さすが悟」
思わず驚きを隠せない私に、目の前の硝子が小さく笑う。
「まぁ今まで私が散々アドバイスしたんだから、そろそろ出来てくれなきゃ困るけど。しかもこいつが自分以外に反転術式使えたのはその一回だけ、あとは何度試しても出来なかった。自分には出来るのにね」
「いや、オマエのアドバイスって。ひゅーってやってひょい!だけだろ。まぁあの時リンに使えたのが奇跡だったんだろ」
「確かに硝子のは、丁寧なアドバイスとは言えなかったね。まぁその奇跡を起こした理由としては愛の力が有力かな」
「五条がセンスなかっただけじゃん?しかも愛の力とかウケる。夏油そういうの信じる系なんだ」
「悟が出来たの一回だけなんだ…じゃあ本当に奇跡だったんだね…ありがとう。というか反転術式に奇跡とかあるんだね」
「いや、愛の力はスルーかよ」
そんな三人の言い合いに、思わずクスクスと笑ってしまう。
いつもの皆なだ。悟と傑が少し違って見えたのは…きっと今回の事に色々思う事があったのかもしれない。
もちろんそれは、私だってそうだ。
だけどこうして言い合いをしている姿は、いつものままで、どこか胸がホッとする。
……だからこの時の私は気が付いていなかった。
この時から少しずつ変わっていった小さな変化に…
少しずつ
少しずつ
変わっていく……
私達の思いに……