第1章 一目惚れ
「しかもリンにわざわざチャカすような事言って、馬鹿じゃないの?あれでどんどんリンが七海に対する恋愛感情に気付いていったらどうするわけ?」
「どうもしねェよ」
「はぁ?」
「アイツのあんな顔初めて見たのは硝子も分かってんだろ。俺が何か言ったとして、リンは馬鹿だから七海への気持ちを押し殺すだろうな。そんな事俺は望んでないんだよ」
「はぁ〜、五条あんた本当にリンには優しいんだな。まさか自己中心的代表のあんたの口からそんな言葉が出てくるとは」
「自己中心的?ハッ」
五条は真剣な表情を一変して、クッといつもの余裕の表情でおかしそうに笑ってみせる。
「何?じゃあ、好きな女が違う男のモノになっていくのを素直に見守るっていうわけ?あんたらしくもないね」
「…だろうな」
「恋すると人間皆んな馬鹿になるって言うけど本当だな。私から言わせてみれば五条、あんたはどうしようもない馬鹿だよ。本当に…」
「硝子もキツイ事言うね、俺傷ついてんだけど」
「あんたがいつからリンの事が好きだったか分かってる?もうずっと前からだよ。まぁ己が気付いてなきゃ何の意味もないんだけど。こっちはいつ気がつくんだろうって焦ったくて仕方なかったつーのに。何で気付いた途端こんな事になるかね」
「ハハッ俺より俺の事分かってんじゃん。硝子さん」
硝子は呆れたようにため息を吐き出すと、リンを追いかけるようにして歩き出した。