第1章 ハーデンベルギア
駅にいたはずだった。
久しぶりに友人と食事を楽しんだ休日。
明日も仕事だからそろそろ帰ろう。また会おうね、暇な日分かったら連絡するね。なんて、いつも通りの別れの挨拶をした。
そして夜のやや混雑した電車に乗ろうした瞬間、足を踏み外したような感覚があってそのまま下に落ちた。と言ってもホームと駅の間に落ちたわけではなく、電車に突然穴が空いて落とし穴に落ちたような感じだった。駅のホームの高さなんて比じゃない、バンジージャンプのような長さだった。
転ぶと思った瞬間「あっ」と一言声が漏れたが、転んだんじゃなくて落ちてると分かった瞬間怖くてぎゅっと目を閉じた。
足が折れるかも。
折れるだけならまだ良い。
このまま死ぬかも。
…いつまで経っても想像しているような衝撃が来ない。
どのくらい経ったかも分からず、ゆっくり目を開けて上下左右どこを見ても真っ暗で何も見えない。そう言えば落ちている時の嫌な浮遊感がなく、ふわふわ宙に浮いているようだった。
一体何が…?
その瞬間、眩しい光につつまれて目の前が真っ白になった。反射的に目を閉じ、瞼の前に手をかざして光から目を守ろうとした。
無音の世界から一転して
サラサラと風に草木が揺れる音、ザーザーと降り注ぐ雨の音、それに準じて濡れていく服と髪と肌。
どこかに座っているようだけど、目を覆う手と逆の手を地面に着けてみれば明らかに草と土と思われるものに手が触れた。
光に目が慣れてきたのを感じ、ゆっくりと開いて周りを見渡せばそこは広い草原と木が点在しているだけの世界。
「…ここ…どこ…」