第4章 隠し味
先生は私の動揺なんか気にもせず、手元の料理の方が気になったみたいで、濡れた髪をタオルで拭きながら小鉢を見てくる。
「なに作ってたの?」
「えっと……明日の昼のおかず。ほうれん草のおひたしとかハンバーグとか。大根おろしとポン酢で和風バーグにして食べて」
「僕のお昼?」
「うん。明日も私、仕事でいないから」
先生の髪を拭く手が止まった。
「コンビニ飯でいいのに。ただの居候なんだしさ」
「だって今日もコンビニだったでしょ? そんなのばっかり五条悟に食べさせられない。飽きるしお金もかかるし、それに……」
食べ物は大事だ。心にも体にも密接に関わっている。この異世界で五条先生はメンタルを保つ必要がある。
「五条先生には絶対に戻れるって、呪術も六眼も元通りになるって希望を持っていてほしいの。それには作ったご飯を体内に入れるのが一番」
「隠し味たっぷりだねぇ」
「あぁ、愛情ってこと?」
愛情……なのかな? それは男女の愛って事ではなく、人を思う気持ちなのならそうなのかもしれない。
じゃあカレーも、私を思う気持ちで作ってくれたの?