第17章 帰還
――ジョー、神坂ちゃんを頼んだわよ。
事あるごとにそう言われたスミレさんの声が耳の奥で響く。
歯をニカッと見せて親指を立てるボブの姿が脳裏に浮かぶ。
娘を元の世界に戻すから後は任せたよって、そういうことでしょ。僕は無意識に手が伸びて、隣に座る万愛を抱きしめた。
「幸せにするよ」
心の底からそう誓った。万愛は一瞬、驚いた顔をしたがすぐに頬を染めて僕の首筋に両腕を絡めて抱きついてきた。甘いフローラルの香りが鼻腔をくすぐる。
「さっき幽霊って言ったけど、幽霊が怖い存在とは限んないよ。現にこのネックレスは君を守る呪具だったんだから」
万愛が体を離して僕を見た。
「えーでも、見ず知らずの幽霊に守られても……」
「見ず知らずじゃないかもじゃん。例えば、そう、君の両親とか?」
「その発想は素敵だな。悟もそういう感動的なこと言うんだ?」
「どういう意味だよ」
万愛がクスって笑ってから僕を見つめ、顔を見合わせて二人で破顔する。暫くして万愛はこてんと僕の肩に頭を乗せた。
「好きって意味!」
前はこんな事言わなかった分、可愛すぎて悶絶しそうになる。