第17章 帰還
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トントントントンと、リズムよくまな板に包丁が当たり、心地いい音が鳴り響く。
胡瓜を輪切りにして、わかめとイカと胡瓜の酢の物を作っているところだ。
最近酸っぱいものが食べたくて、よく作り置きをしている。
「たっだいまー」
リビングのドアが開くと同時に彼の声が聞こえた。
「お帰り。早かったね」
「あれ、硝子来てんの?」
「うん、ちょっとお腹が張るって言ったら心配してくれちゃって」
雑誌を読みながらソファーに腰掛けていた硝子さんが顔を上げた。
「五条が帰って来たなら、もう大丈夫だな」
「よくないね。ちゃんと腹ん中診た? 心音異常ないよな、手足も動いてるよな、イケメンだよな?」
「だから私は専門外だって何度言ったら分かんだ」
眉間に皺を寄せて硝子さんは広げていた雑誌を閉じた。だけど私もつい気になってしまった。
「この子、男の子ですか? イケメンだし脚長いし強いしオタクがキャー! ですよね?」
「まだ性別判定できる時期じゃないよ……って、万愛ちゃんなんだそれ。段々五条に似てきてないか?」
悟が私の肩をぎゅっと抱き寄せた。
「夫婦は似てくるっていうからねぇ」
「嘘っ、やだ」
「やだってなに」
硝子さんが呆れた顔をして笑っている