第17章 帰還
だけど頭の中でパチンと大きく呪膜が弾けた。守られていた古い記憶が鮮明になる。と同時に二人の立ち姿が遠のいていく。
「スミレさんっ」
「ずっとずっと万愛を愛してるから。五条の坊ちゃんと幸せにね」
「……ねぇ、待って」
遠くまで手を伸ばしたけれど、私の手は空を掴むだけで触れられない。届かない。
スミレさんは手を振って私を見守っている。その横に立つボブ。
「オレモ万愛ヲアイシテル。ウマレルマエカラネ。転生の術式の縛りで、子供が生まれる前に転生先に行くことになってる。会えてよかった」
「ボブ……まさか」
「ちゃお」
「グッバイ」
二人に真相を確かめたい。もう一度手を握りたい。そう思い腕を伸ばす。
この結界は奥が岩盤になっている。後ろ蹴りすれば、反動で体が前に出て異次元に戻れるかもしれない。
そう思い足を後ろに伸ばしたが、そこはぐにゃりとしていて、むしろ引き摺りこまれそうになった。
直感的に分かる。もうこの世界には戻れない。