第17章 帰還
たじろいだ。まるで私がそこから二次元の世界に帰るのを知っているみたいだ。
ボブが後ろから手を伸ばし、クローゼットの扉を開ける。
困惑して振り返ると二人と目が合った。三人でそれぞれを見つめ合う。立ち位置を繋ぐと出来る形は……三角形だ。
急に術式のことを思った。なんで今そんなことを。
どういうわけか、自然と手が中央に伸びる。ボブとスミレさんも同じように手を伸ばしてきて私に重なり、ボブとスミレさんの手もまた重なり合う。
指に力が入って丸まると、それをもう片方の手で各々が包み込んだ。スミレさんが私に視線を注ぐ。
「こうやって手をぎゅって握ると安心しない? 大丈夫って気持ちになる」
どこかで、このフレーズ聞いたような……。
「うん。安心する」
無意識に私はそう返答した。
「誰かの手を包みたいって、そう思ったらそれが愛。大切な人の幸せを願う気持ち」
ざわざわっと胸が音を立てた。
なんだろう、この胸騒ぎは。愛なんてとっくに知り得ていて、それが術式にすらなっているのに初めてこの言葉を知ったような感覚に陥る。