第17章 帰還
「え、ちょっと待って」
スミレさんが私の首元にネックレスを付け始めた。戸惑っている時間すら与えられず、スミレさんはチェーンの長さを調節する。
鏡に映るそれはシルバーなのかプラチナなのかわからない独特の煌めきで実に美しい。遺伝子の形みたいな模様が波打っている。
「不思議なデザイン……」
「世界に二つとない代物だからねぇ」
「えっ、そうなの? いやいやそれは貰えないよ」
「いいのいいの。私とボブからのプレゼント」
「高いやつじゃん!」
「あらら? 首筋にキスマーク発見。ここにもここにも。ジョーの独占欲って激しそうよね」
「聞いてます?」
全くお構いなしにスミレさんは私の髪を手櫛でふんわりと整えている。
悟と同じくうなじのホクロが気になったようで、暫くそれを見つめる姿が鏡に映り込んだ。
ふんふんって上機嫌に鼻歌を歌い出す。相合傘してアパートまでの道のりを歩いた時も思ったけれど、どこかノスタルジーに駆られる歌声だ。
「はい出来た。お幸せにね! バイバイ」
仕上がったかと思いきや、スミレさんが私の背中をトンっと押した。なぜかクローゼットの方に向かって。
ボブも私の背中に手を添えて、二人でクローゼットへと押し進めている。
――え、なんで?