第17章 帰還
私は二人を交互に見つめてこくりと静かに首肯いた。
「はい、もう出ようと思います」
切なそうに目を細めたスミレさんが、一歩私との距離を詰める。
「ねぇ、落雁は今でも好き?」
「え?」
唐突な質問に面食らって思わず聞き返した。
「あ、えっとほら、紙袋の中に入ってた菓子詰、落雁だったじゃん?」
「あぁ、ちょっとした思い出の味で。ってこの話、しましたっけ? 小さい頃、母と一緒にお金持ちのお屋敷に呪具……じゃなくて調度品を売る仕事について行ったんですけど、そこで貰って食べた落雁がすごく美味しくって……」
「そう」
スミレさんが遠くを見るようにして、そのままゆっくりと目を瞑る。なんだかいつものスミレさんと違う。
そう思っていると、急にパッと目を見開いて、元のテンションで私に近寄って来た。
「じゃあお餞別っ! ハワイのお土産ね。ハイビスカスの首飾りの方が南国っぽいんだけどさ、神坂ちゃんにはこれあげる」
背後にスミレさんが回りこんだと思ったら、後ろ髪をサイドに寄せられた。
どこから持ってきたのかボブが開閉式のミラーを広げて、私に映った姿を見せる。