第17章 帰還
玄関を出ていく悟の広い背中、帰ってこなかったハロウィンの夜、そして獄門疆から救出出来なかった無念が蘇る。
羂索との戦いに破れ、死を覚悟したあの瞬間、悟を助けようとした事への悔いはなかったけれど、たった一つだけ後悔していたことがあったのを思い出した。
もう一度だけ悟の顔を見れたなら伝えたいと思っていた――。
ひょっとして原作者はそのチャンスを私にくれたんじゃないだろうか?
自らの術式に怖がって自らを縛り上げていた呪い。その解呪こそが私が異次元にトリップした大意なのでは? 呪術廻戦ってそういう物語だ。
「んじゃ、また呪術の世界で」
「悟!」
思った以上に大きな声が出て、振り返った悟が驚いたように私を見ている。
「なに、なんか忘れもん?」
「うん、大事な忘れ物」
私は側に駆け寄って、目一杯息を吸い込んだ。
「……どしたの」
「あなたのことが好きでした。ずっと、ずっと、ずっと前から」
「へ?」
「愛してる、悟」
今まで一度も言えなかった言葉を口にした。それは川の流れのように淀むことなく、自然に口からこぼれ出た。