第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
私の拡張術式は第三者の愛を強制的に発動させ奪うことだった。
愛のない人間でも必ず持ち合わせている愛情がある。呪いの王である両面宿儺や知能の高い特級呪霊も例外ではない。
それは――自己愛。生きるために最低限必要な愛だ。生存することそのものも突き詰めれば自己愛になる。
それを強制的に奪い取ることで呪力のインプットとアウトプットの質量を増やすことができた。加えて僅かでも羂索が他への愛を持っているならそれも全て私に向けることで、術式を強化出来る。
私はあの戦いできっと拡張術式に成功した。羂索が持つ愛を発動させ、略奪したに違いない。
「そうか。だから羂索は急に私を妻にすると口にしたんだ。アイツ自身が持つ歪んだ愛が私に向けられ、それで私は術式の質量を増幅させ結界に穴を開け別ルートを作ることが出来た。だけどそれに気付いた羂索が玉に封じ込めて持ってたってことか。そして悟に肉体的ダメージを与えられ玉を落としてしまった」
「どうだろうね」
「何か間違ってる?」
「あまり言いたかないけど、僕の見立ては少し違うかな」
悟が苦笑する。他にどんな解があるというんだろう。
羂索が私を妻にするなんて言った理由はそれしかないし、結界に穴を開けられたのは拡張術式の力だ。無言で悟を見つめていると悟は話を続けた。