第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
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静けさが戻り悟と二人きりになった。腕の中にいた私を悟がゆっくりと離す。
「怪我してない?」
「うん」
気持ちが落ちつき始めて、ふと今の状況を冷静に見つめた。
「ねぇ悟……。アイツをぶちのめしたかった気持ちは分かるけど、私が元の世界に戻れるチャンスを逃したんじゃ? 私はきっと一生ここに閉じ込められる」
「どうかな。ムカつくけど奴が君を見る目はマジだったからね」
「どういう意味?」
「ほーら、言った矢先にこれだよ」
悟の視線を辿ると、さっきまで羂索が突っ伏していた場所に呪霊玉より一回り小さな濡羽色の玉(ぎょく)が置かれていた。
「なにこれ?」
拾い上げるとぐにゃりとしたが、球体が崩れることはない。
呪術的な勘が働いて、私はそれを部屋の中に持ち入った。悟も同じように感じたのか、私と一緒にクローゼットへと足を進める。