第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
すぐに両面宿儺だと分かった。羂索を呼び戻すことが目的なのか、あちら側の世界から結界内に働きかけている。
竜巻(おそらく羂索の結界)がこちらに近づいてきて、突風に飛ばされそうになった私を悟が腕で抱き止める。
その腕にしがみつきながら懸命に目を開けると、結界はつむじ風のように羂索を巻き取って上空へ立ち昇ろうとしていた。
羂索にとっては、両面宿儺による空間の切り裂きでタイミング良く命拾いした形だ。私を抱えながらの状態で悟は戦えない。仕切り直しだ。
昇っていく羂索に悟は冷静に声をかけた。
「運だけはあるようだな……次はないけど」
「君こそ運がないよ五条悟。ここで君に会った事で確信した。全くもって油断ならない男だと。仮に獄門疆が開門されたとしても君は生きられない。設置場所を変更しとくよ」
そう言い放った後、羂索はなぜか私に目を向けた。数秒間彼と目が合う。
「五条悟さえ思い出さなければ、君は、私を――」
風の吹き抜ける音がびゅっと響く。羂索は言葉を言い終えることなく、その姿は深い闇夜に溶け込むようにして消失した。