第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
「遊びはおわり」
悟は胸ぐらを掴んで羂索の体を玄関の外へと放り投げた。廊下の壁に背中が激突し、苦悶の表情を見せる羂索に、容赦なく拳を顔面へと振りかざす。
それをすんでのところでかわし立ち上がるも、バランスの取れない体に悟の膝蹴りが入って、羂索は内臓が潰されたかのような悲鳴を上げた。
「げほっ、はぁ……はぁっ」
「ちょろすぎ。呪力が使えないから弱いとでも思った? 」
「待て、いいのか? 私が消えれば万愛も元の世界に帰る術がなくなるぞ」
「気安くフィアンセの名前を呼ばないでもらいたいね」
羂索にとどめとも思える拳を振りかざしたその時。
突然、雷鳴のような轟音が響き渡り、目の前の空間に亀裂が入った。と同時に竜巻のような渦巻いた風が吹き荒れる。
『目的の小僧を手に入れた』
闇を切り裂くようにしてどこからかしわがれ声が聞こえた。おそらくこれが聞こえたのは私と悟と羂索――二次元の人間のみだ。
竜巻も誰も気付いていないように思う。暗黒の中にどよめく呪い……。