第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
すると羂索は、開き直ったようにゴホっとひとつ咳払いをして、大きく手を広げた。
「まあいい。なら結界を閉じて五条悟を永久にこの世界に封じこめるまでだ」
「脳みそがまるで働いてないね」
「あ?」
「僕がいつテメェの結界を通ってここに来たって言った?」
「なにっ、違うのか! なんなんだ君は一体」
話す気はないと言わんばかりに無言のまま悟は、羂索のみぞおちに強烈な拳を叩き込む。
鈍い音と共に「かはっ……」と苦しそうに羂索は体を折り曲げた。
その衝撃に思わず目を瞑る。その間も悟は攻撃の手を緩めなかったようで、うっすらと瞼を開けると、膝をついて項垂れている羂索の首に容赦なく足を乗せ、そのまま押し倒していた。
「この世界で決着つけるとするか」
「うっ……」
ガツンと音がして床に頭を強打した羂索が小さなうめき声をあげる。悟はぐりっと靴底をねじ込んだ。
呪術が使えないこの世界は肉弾戦のみだ。羂索の肉体は頑強な傑さんとは違う。どう見ても悟の方が上回っている。
――つまり羂索にとって、今が命の瀬戸。