第4章 隠し味
「いただきます」
「どーぞ」
「五条先生はいいの?」
「僕はもう先に食べちゃったから」
「そっか、もうこんな時間だもんね」
テレビ横のデジタル時計は21:42と表示されている。
「じゃあ、お風呂沸かすよ。洗わないと気持ち悪いでしょ」
カレーに手をつける前にさっと立ち上がった。
「伊地知なみによく働くねぇ」
「そうでもないっす。あざっす」
新田ちゃんの真似をして、洗面室へと向かう。「それはあまり似てないよ」って後ろから聞こえたけど、会ったばかりの人にモノマネを見せた私の勇気を讃えて欲しい。
お風呂の栓を締め、湯を入れて部屋に戻ると、五条先生は、着替え用のスウェットを手にしていた。スポーツショップで購入した服だ。これまで五条先生が着た中で一番ダッサイ服かもしれない。
「そんなのしか買えなかったんだ。ごめん」
「問題ないよ。普通の店にサイズがないのは僕が一番わかってるからさ。千愛の頑張りに感謝してるよ」
目が合って微笑む。頑張りをわかってもらえたって事が嬉しい。それに、そう言ってもらえて気が楽になった。