第4章 隠し味
「そうだ先生、お腹すいたでしょ。すぐ夕飯準備する」
五条先生の横顔を斜め下から見て、スーパーで買った食材を伝えようとした。すると室内に食欲をそそる独特の香辛料の匂いが漂っているのに気が付く。
「この匂いって……まさか。カレー?」
「ご名答。千愛がお腹空かせて帰ってくるだろうと思ってね、作っといたの」
「うそ、私にカレーを作ってくれたの?」
「と言っても市販のルーだよ。冷蔵庫に置いてあった使いかけのやつ。あーあと、勝手に野菜や冷凍室の豚肉も解凍して使ったけどよかった?」
「もちろん!」
首を大きく縦に振る。抱き抱えられたままキッチンまで運んでもらい、鍋の前で体を下ろしてもらった。
深鍋の蓋を取って中をのぞくと、大きめにカットされたじゃがいもや人参がごろごろしてる。
「はぁぁぁ。五条先生のカレーとか、カレーとか、カレーとか、カレーとか……」
「何? 傷が入ったCDみたいになってるけど」
「感激ぃ!」
疲れが一気に吹き飛んだ。オタクパワーって恐ろしい。ナナミンが最推しとは言え五条先生だって大好きなキャラだ。そんな人にカレーを作ってもらえるなんてこの上ない幸せ。くっそ萌えした。
「ありがとう五条先生。すごく嬉しい」
ありったけの気持ちを込めて先生に御礼を言うと、綺麗な顔した五条先生が、更にきらっきらの顔して返してくれる。鍋に火をかけてお玉でカレーをかき混ぜる姿すらかっこよく思える。
「僕は牛肉派なんだけどさ、豚でも食えるよね?」
「あったりまえです。猪でも熊でも何でも食べてみせます」
五条先生が鍋の前でククって笑う。「そっちの方が作んの大変だよ」って。たっぷり盛ったカレーとスーパーで買ってきたシーザーサラダをローテーブルに並べた。