第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
「ジョー……オーナーと会ったことあるの?」
「千愛はコイツがこの世界の住人に見える?」
「えっ?」
「そのうざってぇ前髪上げてみれば分かんじゃない? 幼児が描いた線路みたいな額してるから」
オーナーがピクッと眉を動かしたのが目に入った。それを見てぎょっとする。
嫌な予感がする……。
そういえば一度だけちらっと彼の額を見たことがあった。跪かれて手の甲にキスを落とされた時だ。
すぐに前髪を整えたから隠れてしまったけれど、悟の言う通り確かに額には横一直線に特徴的な傷跡があった。
「さすがに傑のままでは姿を現せないよな。万が一、千愛が記憶を取り戻す引き金になっちゃいけない」
意味ありげなものの言い方をして悟が玄関先に立つオーナーに詰め寄る。
「肉体をすり替えて千愛を騙したつもり? 忌まわしい魂は丸見えなんだよ」
凍てつく声がこの場を制した。
心臓がどくんどくんと激しく脈打つ。
悟が言った言葉の意味を頭の中に落とし込んで、改めてオーナーの魂そのものをじっと見つめる。
その瞬間ぞくぞくっと背筋に悪寒が走った。それはかつて感じたことのあるものだった。