第16章 愛ほど歪んだ呪いはないよ
どうしよう……。オーナーに対していい子ちゃんしようとするから駄目なんだ。
"私はあなたの事が好きじゃないのに、いいように好意に甘えて寂しさを紛らわせていただけです。そういう女です"
こう弁明して謝るしかないと決断し、最後の一歩を大股で進み出た。足を揃え、深くこうべを垂れる。
「オーナーごめんなさい。実はここにいる彼と付き合ってます」
しばらくそのままの姿勢でいたけれど、何も反応が返ってこない。相当困惑させてしまったのだろうと頭を上げられずにいると、頭上でパシッと音がした。
何ごとかと恐る恐る見上げると、悟がオーナーの手首を掴んでいる。オーナーは謝る私の肩に手を置こうとしたようだった。
「触れさせるわけねーだろ」
思いがけず荒っぽい悟の声色に驚く。
悟がこんな口調になる時は、おおかた呪霊や呪詛師に向かっている時だ。
ただの非術師にどうして? 手首を掴んでいる悟の指先には力がこもっていて、田丸のときの比じゃない。