第4章 隠し味
「十分だよ。……よくこれだけ揃えたね」
そう言うと、大量の袋を部屋の中に運んだ。床に座り込みながらぼんやり彼の動きを見ていると、再びこちらに戻って来て、私の目の前で停止する。
サッとかがみ込んで顔が見えたと思ったら、背中に腕が回り、脇を支えられ膝の裏に手を入れられた。
え?
身を斜めにされ、ひょいっと抱え上げられる。
「ちょ、ちょっと」
突然の事で、反射的に落ちないよう五条先生の首に手を回してぎゅっと捕まった。急に密着した体にドクドクドクッと胸の鼓動が鳴る。
「いいよ、重いでしょ。歩くから下ろして」
「君が重いなんて言ってるようじゃ最強なんて名乗れないよ」
笑ってそのまま玄関から部屋に向かってゆっくり歩き出す。逞しい腕にホールドされて、とても下りられそうにないから諦めて身を任せることにした。
胸のドクドクって心音が体を通して伝わったらどうしようなんて思ったけど、先生の歩幅に合わせて体が揺れるとなんとも心地よくて、疲れがすうっと取れていく。