第4章 隠し味
「五条先生ごめんなさい。すっかり遅くなってしまって」
玄関のドアを開けて、両手を塞いでいたもの一式をドサドサっと玄関に置く。やっと帰宅した。
ふぅーっとひとつ長めの息を吐くと、五条先生が奥から現れた。
「おかえり。お疲れサマンサー。遅くまで頑張ったねぇ」
「えっ、まさかの生サマンサー?」
「ん?」
わぁーん。なんだろー。家に着いた事で一気に気が抜けたのか、ねぎらってもらって嬉しかったのか、それとも単純にサマンサーに感動したのかわからないけど、五条先生の顔を見たら安堵感みたいなものが湧き出てきて、子供みたいにペタンって床に座り込んでしまった。
「どしたの。よろよろになって」
「何でもないよ、大丈夫ー」
へらっと笑ったけど腰が抜けたみたいに立てない。とってもとっても疲れてしまった。
玄関に散りばめられた大量の荷物に気が付いたみたいで、五条先生が辺りを見渡す。
「これひとりで全部買ってきたの? 僕のもの?」
「うん。だけど大したもの揃えられなかった。探しても服が見つからないし、あっても私の甲斐性がなくて買えないし……」
値札を見てハンガーを元に戻した時の気持ちを思い出し、ほんの少し悲しくなる。五条先生は衣類が入った紙袋の中をのぞいた。